聴覚障がいの早期発見の重要性を前回お伝えしました。
早期発見のために、現在では6割以上の産婦人科行われている新生児スクリーニングについてお伝えします。
聴力検査の種類
純音聴力検査
この純音聴力検査は、あなたもやったことがあるはずです。
大きめのヘッドホンを耳に当て、「ピー」っという音が聞こえたら、手に握ったボタンを押すという検査です。
この機械をオージオメータといいますが、1,000Hz、2,000Hz~8,000Hzと周波数にあった音がヘッドホンに流れてきます。それがどの周波数で聞こえてきたのか(ボタンを押すタイミング)、聞こえ始めの数値を測定します。これを『標準純音聴力検査』いいます。
骨導検査
この純音聴力検査と同じオージオメータを使います。骨導の文字からもわかるように、振動(バイブレレーター)を頭(頭蓋骨)にあて、直接音を聞かせる検査方法です。
標準純音聴力検査で、聴力の低下が認められた時に骨導検査が行われます。
この骨導検査で聴力の低下と判定されなければ伝音性難聴。聴力の低下と判定されれば感音性難聴ということになります。
語音聴力検査
この語音聴力検査は、上記2つの検査とは異なり、「音」の聞き取る能力ではなく「言葉」を聞き取る能力をみるものです。
純音聴力検査や骨導検査では、周波数や振動により音を聞き取っていました。音を聞き取る能力と言葉を聞き取る能力は似ているようで違います。音を聞く能力はあるのに、脳の中で言葉として処理できないという障がいもあります。
検査の方法も、単純に数字や「か」「さ」などから始まり、「朝」や「車」などの単語を対象者に発してみて、理解できているかを検査します。
新生児聴覚スクリーニング
言葉の理解や脳の発達には、聴覚の力は大切です。
ですので聴覚に障がいがある場合は、できるだけ早い専門的な対応が望まれます。
これまでは1歳半と3歳の時の検診で、聴力検査は行われてきました。言葉に興味を持ち出すのは1歳からと言われ、検診の時点では少し遅れがでます。そのために生まれてすぐに聴力検査を行う必要があり、そのために行われるのが新生児スクリーニングです。
検査方法
聴性脳幹反応(ABR)
聴性脳幹反応(ABR)は耳から音が入り、外耳・中耳・内耳と通り聴神経から脳へと電気信号が送られますが、その神経からの脳への電気信号をみるものです。ほかの音に反応しないように防音室で検査が行われます。
数分という短時間で検査を行うことができます。
約30デシベルほどの音で反応をみますので、その音に対して脳への反応がなければ、軽度難聴という判定になります。
公財母子衛生研究会というところが、自動ABRの様子を動画で公開されていましたので、そちらを見たほうがよりわかりやすいかと思います。
聴力検査では、標準純音聴力検査のような、聞こえたらボタンを押すという検査(自覚的聴力検査)では、障害者手帳を不正に取得しようという方には見破れません。過去にもそのような事件がいくつかありました。
その防止法としても、聴性脳幹反応(ABR)や聴性定常反応(ASSR)が用いられるようにもなりました。
検査費用も、自己負担額で約2500円~6000円程度で検査が可能とのこと。詳しくは市町村窓口や掛かり付け医院へご確認ください。
耳音響放射(OAE)
もう一つの方法が、耳音響放射(OAE)です。
この検査は、耳の中の蝸牛に音が入ると、有毛細胞が動き出し、音の振動がその動きに反応して強くなります。その強くなった振動は、音として内耳から外耳へと返ってきます。
その音を耳音響放射といい、それを耳音響放射検査装置で測定します。
誘発耳音響放射(TEOAE)、歪成分耳音響放射(DPOAE)、自発耳音響放射(SOAE)など各検査項目がありますが、約40デシベルほどの聴力があるか検査が可能です。