出典:Wikipedia
聴覚障がいの子どもたちを見ることが多いのですが
10年位の間で、補聴器よりも人工内耳を装着した子が増えたなと実感します。
私も最初、人工内耳を装着している子を対応するのに、3ヶ月ほどは対応にドギマギしました。
大掛かりな装置を頭の内部に装着し、大勢の子どもたちの中でワイワイと騒ぐ、その子を見ると人工内耳が壊れないのかとドキドキしたものです。
補聴器のような機械からつながる丸い部分が、磁石によって頭にペタっとくっついていて、何かの拍子に外れると【ピーピー】という音がなるんです。
でも、その機械音はその子には聴こえず、よく周りのお友達が「ねぇ、ピーっていってるよ」と教えてくれていました。
対応になれてくると、ある程度は激しい運動をしても大丈夫ということにも気づくのですが、やはり初めて対応するような先生は、私と同じようにドギマギするのではと思います。
人工内耳とは
出典:Wikipedia
このイラストからも分かるように、人工内耳は外の音を直接、内耳の蝸牛部分へ電気信号を送り、聴神経から脳へと音を伝えます。
人工内耳が増えた理由
・医療技術の向上
現在では医療技術が向上し、比較的簡単に手術が行えるようになりました。
しかし、頭の中に機械を入れるわけですので、現在でも1%以下の確立で、顔面麻痺や味覚障害、髄膜炎など後遺症がでることがあります。
・諸外国に共通した政策
人工内耳の手術では約400万円もの費用が必要になります。
そんなに高額なの?と驚かれるかも知れませんが、健康保険や高額療養費制度、医療費助成などの補助金や医療保険で大半がまかなわれ、自己負担も数万円ですみます。
諸外国でもそうですが、人工内耳へ数百万円の補助金を出すよりも、その子が高齢になるまで情報保障(手話通訳や要約筆記)を依頼する金額(これも自治体での補助金)を比べると、人工内耳したもらった方が長い目で見ると安くですみます。
あるドクターからの話、人工内耳手術を行えば、病院へも高額なお金が入るので、政策の大義名分の中で人工内耳を患者に進めることが多いとのこと。
・言語や母語の選択
聴覚障がいのお子さんが生まれた時に、ご家族が一番つらいと思われるのは、我が子との意思疎通が音声言語でできないこと。そのように話される保護者の方が多くいます。
人工内耳を希望される保護者は、健聴者の場合が大半です。
逆に手話を母語(常に使用する言語)とするろうあ者のお母さんが、「我が子がろう児として生まれてきた嬉しい」と話してくれました。
やはり、我が子と母語を共有できること、自由に話せることは親としての喜びです。
もちろん、我が子が健常児として生まれてきてくれて嬉しいという、ろうあ者のお母さんもいます。
人工内耳を選択すれば、その子の母語は日本語による音声言語。人工内耳を選択しなければ、手話が母語になるでしょう。
昔ならば、高度難聴や全く聞こえない子どもが生まれたら、ろう学校などの専門機関へ通うのが当たり前だったでしょう。しかし、現在では人工内耳という選択肢ができたことで、その子の未来の選択肢も増え、健聴の保護者の方は人工内耳装着を選ぶ方が増えました。
我が子の未来
健聴の保護者で、福祉的な知識がない保護者にとってみれば、我が子に聴覚障がいがあるという事実だけでも辛いことです。しかも、我が子の将来、人工内耳を装着するかの選択も早急に迫られます。
私が思うのは、まずは保護者に対しての情報を与えていただきたい。
人工内耳のメリット・デメリット、ろうあ者について、手話という選択肢など、生まれて間もなく将来を決めなくてはならないことは大変ですが、しっかりと情報を得た上での選択を行ってほしいですね。
人工内耳についてお伝えしましたが、手話を選択するということへ2年ほど前から大きな動きが起きています。全日本ろうあ連盟を中心に【手話言語法】を制定しようとするものです。
手話を守る・手話を獲得する・手話で学ぶ・手話を使う・手話を学ぶの5つを柱にし、署名活動などや自治体への意見書や条例の要求など、現在では全国ほぼすべての自治体で手話言語法制定意見書が可決されています。⇒詳しくは、こちらへ(全日本ろうあ連盟)
まずは情報や知識を得ることと与えること。未来の選択はその後です。